咲かなくなったりんどうの花

考えてしまうこと

りんどうの花は10月ころ、咲く花です。
野山の土手に、白いヒメジオンや
黄色いオトギリソウと同じ頃に咲きます。
名前も知らない草の中で、
あの濃い青い色は、ひと際、私の目を引きました。

田んぼの土手に咲いていたりんどうの花

私が子供の頃は、四季折々に咲く野草を
自然の中で見ることができました。

りんどうの花もその一つで、
あの濃い青色に、思わず手が伸びて
5,6本手折って、家に持って帰ったものです。

りんどうが咲かなくなった?

10年ほど前、兄がまだ存命だった頃。
私は、稲刈りの後片付けのために
実家に帰っていました。

兄と田んぼに行って、
乾いた土の上を歩きながら、
落穂拾いをしました。

兄が
「ここの土手に、りんどうが咲かんなったとよなぁ」
と言いました。

「えっ、なんで?」

兄は
「わからん」

「農薬のせいじゃないと?」


「ここ(この田んぼ)には農薬は撒かんもん」
と言います。

草刈り機の登場で?

兄は話を続けて言いました。
「草刈り機で、草を刈るとよな。
 それが悪いとかも知れん・・・・」

一昔前までは、田んぼの土手でも、
道路の脇道でも
杉山の下刈りでも、
人が鎌でもって、草刈りをしていました。

それがいつの間にか
草刈り機に代わっていきました。

ここでも”便利さに押され″
時間の軽減と肉体の負担のことを考えたら
当然のことですが
草刈り機が導入されていったのですね。

鎌と草刈り機の違いって?

草刈りは、今までも鎌でしていたわけです。
毎年、同じ時期になれば、
坊主頭の男の子のように
土手はさっぱりと刈られていたのです。

草刈り機は、結構なエンジン音がします。
そして、一気に刈っていきます。
人力と草刈り機では、
時間と労力が格段と違います。

りんどうの花は怖がり?

もし、りんどうの花に何か感情があるとしたら、

突然、爆音がして、鋭い歯が
一気に迫ってくる。
仲間たちがあっという間に息絶える。

「次は私の番・・・」

まるで、パニック・ホラー映画のようですね。

もし、理容室・美容室に行って
突然、チェンソーを出されたら
人間もパニックなりますよね?
いくら綺麗にカットしてもらったって
怖いですよね?

心優しい兄の気持ち

なぜ、りんどうの花が咲かなくなったのかは
今でもわかりません。

「りんどうが咲かんなったとよなぁ」

そこにりんどうの花が咲いていたことを
知っていた兄。
咲かなくなったことに心を痛めていた兄。

あの土手に咲いていたりんどうの花に
兄の優しい気持ちが伝わるといいのにな。




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