620円のやり取りから学んだ、話し方の課題

仕事と私

ある日、支払いの窓口で620円のお支払いについて、患者さんとの間に行き違いがありました。
この620円は診断書を郵送するための通信費で、患者さんの自己負担になります。

患者さんは「そんなふうに聞いていない」とおっしゃっていて、その場の空気は一気に緊張しました。

私は普段、患者さんと直接お話をすることは少ないのですが、支払いに関して疑問があった場合は、窓口まで出向くこともあります。

通信費は自己負担

基本的に、診断書の費用は患者さんの自己負担になります。ただし、お支払いが不要なケースもあります。しかし、通信費だけは必ず自己負担となります。
(今回の場合は、診断書はお支払いが不要でした)

今回の件は、ベテランのクラークさんが事前にきちんと説明をしており、ご理解も得ていたとのことでした。
それでも患者さんの中では「違う受け止め方」になっていたのです。

退院が近づいたある日、病棟で通信費の話題になったとき、患者さんが「じゃあ今、払いましょうか?」と言ったそうです。
クラークさんは「いえいえ、いいです」と返答しました。
(職員が病棟で患者さんから直接現金を受け取ることはできません。お支払いは必ず窓口でお願いしています)

ここまでのやりとりは、患者さんとクラークさんの証言が一致しています。
しかしその後、患者さんはこう言いました。
「その人(クラークさん)が、その場で“お金は要らない”と言ったんです」と。

話のもつれの始まり

私は、患者さんが嘘を言っているとは感じませんでした。
振り返ってみると、このやりとりの中で、患者さんとクラークさんの間に小さなズレや勘違いが生じたのだと思います。

私は「そういうお話をされたんですね」と言い、そのズレを解きほぐそうとしました。
しかし、そのとき患者さんの表情が変わったのです。

患者さんはこう言いました。
「私の言うことより職員の言うことを信じている。私は“職員がそう言った”と伝えているのに、嘘をついているように思われてしまう。私が証明できないのと同じように、職員が言ったことも証明できないでしょう」

私だけが損をしている

さらに患者さんは続けました。
「払わなくて良いと思っていたのに、窓口に来たら“支払ってください”と言われた。これじゃ私だけが損をしている
「620円を払わないと言っているんじゃない。私だけが損をしているのがイヤなんです」

結局、患者さんは「その職員じゃないと話にならない。その人を呼んでほしい」の一点張りで、私は退くしかありませんでした。

誠意だけでは通じない

その後、クラークさんと話をしましたが、「ああいう場合は仕方ないんですよ」と、顔を曇らせていました。
私自身も、あの場で解きほぐせなかったことが残念でなりませんでした。
相手の話に耳を傾けていたつもりが、結果的に「職員側の言い分を押し付けた」と受け取られ、不愉快にさせてしまったのかもしれません。

「仕方ない」で片付けていいのか

その週末、課長から職員に向けて“一週間ご苦労様でした”というメールが届きました。
その中にこんな一文がありました。

「最近、“仕方がない、どうしようもなかった”という言葉をよく耳にします。本当にそうだったのか? 結論を出す前に、もう一度考えてほしい」

この言葉が強く心に残りました。

あのとき、私は(私たちは)どうすれば良かったのか——。

「私だけが損をする」と言われた時、
「通信費は私たちの収益になるものではありません」と言いそうになった自分がいました。

また、「私があなたを嘘つきだと思っている証拠はどこにあるのですか?」と反論すべきだったのでしょうか。
あるいは「それでは第3者に結論を委ねましょう」と突き放せばよかったのでしょうか。

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