コーヒーを飲む時間は、
私にとって「ひと息つく時間」のはずだった。
けれど実際には、その時間はいつも何か“しながら”だった。
YouTubeを見ながら。
音を流しながら。
画面を眺めながら。
仕事に行く準備をしながら。
いわゆる“ながらコーヒー”が当たり前になっていた。
本当は、分かっているのに。
コーヒーを飲むなら、
その香りや味をちゃんと感じた方が良いということも、
その時間を大切にした方が良いということも。
それでも、そうしてこなかった。
仕事がお休みの日は、そうできたはずなのに。
なぜだろうと、退職した今、ふと思った。
たぶん私は、
何かをしていないと、落ち着かなかったのだろう。
「何もしていない時間はもったいない」
そんな感覚が、いつの間にか染みついていたのだ。
「今この瞬間」よりも、
「これから困らないこと」に意識が引っ張られて、
「時間をどう使うか」ばかりを考えていたのかもしれない。
例えば、月曜日から仕事が始まると思うと、
「今日のうちに買い出しに行っておかないと」
そんな考えが自然と浮かんでくる。
強い不安というほどではないけれど、
どこかに小さな緊張があって、
先のことを整えておきたくなる。
それは、きっと間違いではない。
そうやって生活と仕事を回してきた。
その裏で動いていた自分の気持ちには、
目を向けてこなかった。
仕事をしている時は、
お休みの日でも、無意識に
頭の中が「準備モード」になっていたのだと思う。
だから、“今”ではなく、
“これから”に向かっていく。
「今、ゆっくりしている場合じゃない」
「先にやるべきことをやっておいた方がいい」
でもそれは、裏を返せば、
いつも少しだけ先に気を取られて、
今この瞬間を、
十分に感じきれていなかった
ということでもある。
休んでいるつもりでも、
どこか落ち着かない。
そんな感覚があったのは、
そのせいだったのかもしれない。
でも仕事をしていない今、
少し違うことをしてみた。
ベランダに出て、腰かけて、
コーヒーを飲んだ。
そしてただ、その時間を味わう。
何もしていないのに、
満たされている感じがある。
風が吹くのを感じながら、
プランターのバラの新芽を
ボーっと見てみる。
頭の中が柔らかくなっていく気がする。
今までは、
未来への軽い不安と責任感が、
今の時間よりも“準備”を
優先させていた状態だったんだな。
でも今を感じることで
脳の緊張がほどけるのかもしれないな。
少し冷たい風に吹かれながら
これからは、
未来への軽い不安に振り回されて、
「何かをしていなければ」と焦るのではなく、
今この瞬間にあるものを、
ちゃんと感じる時間も大切にしていこうと思った。
何もしていないように見える時間の中にも、
心がほどけていく感覚や、
満たされていく静かな豊かさがあることを、
今日、知ることができたから。
これまで大切にしてきた
「きちんと準備する自分」もそのままに、
これからは「きちんと感じる自分」も、
少しずつ育てていけたらいいと思う。
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