先日、
「ロマンス詐欺」という言葉について記事を書いた。
“ロマンス”という言葉が付くだけで、
どこか事件の輪郭がぼやけてしまう。
本当は、人の感情につけ込んで
お金を騙し取る犯罪なのに、
ずいぶん綺麗な名前だなと思ったからである。
そんなことを書いた直後、
今度は私自身が、
見事に“ロマンティック”を止められなくなっていた。
いつものように求人情報を見ていた時、
ある神社の求人を見つけたのだ。
そこに書かれていた文章が、
なんとも美しかった。
「静謐(せいひつ)」
「品格」
「文化的空間」
そんな言葉が並び、
私はすっかりその世界観に酔いしれてしまった。
以前、その神社には二度ほど行ったことがあり、
十分通勤圏内でもあった。
応募するには少し迷いもあったので、
私は実際に神社へ足を運んでみることにした。
空気は澄み、
働いている方々の挨拶も丁寧で、
「ここで働けたら素敵だな」と思った。
しかも条件も悪くない。
勤務は、ほぼ週末中心だと書いてある。
平日は自宅でブログやnoteを書き、
週末は静かな場所で穏やかに働く。
そんな生活を、
私は頭の中で勝手に想像していた。
それは、
今の私にとって理想に近い暮らし方に思えたのである。
ところが後から、
その仕事が納骨堂の案内に関わる内容だと知った。
求人票を見返してみると、
たしかに「祖霊殿のアテンド」と書かれている。
“祖霊殿のアテンド”って何だろう?
そう思いながらも、
文章があまりにも美しく、
私はすっかり“神社の素敵なお仕事”だと
思い込んでいたのである。
しかも実際に神社へ行った時も、
どこが納骨堂なのか分からなかった。
昔のように、
「ここがお墓です」
と分かる雰囲気ではなく、
空間全体に自然に溶け込んでいたのだ。
そんな話を娘にすると、
「今の求人広告って、
良いことばかり綺麗に書いてあるから、
気を付けないとダメよぉ」と言われた。
たしかに私は、
仕事内容をきちんと確認する前に、
“神社”という看板と、
美しい言葉の羅列に浮足立っていた。
これはもう、
ロマンス詐欺が他人事だとは思えない。
もちろん、
その神社や求人が悪いわけではない。
ただ今回、私は身をもって知ったのである。
人は、自分が思っている以上に、
言葉や雰囲気に心を動かされる。
しかも人は、
「怪しいもの」に騙されるのではなく、
“自分が心地よいと思う空気”に
心を許してしまうのかもしれない。
本当に危険なものというのは、
最初から「危険です」という顔では近づいてこない。
むしろ、
「あなたの理想ですよ」
「あなたに合っていますよ」
「ここなら安心できますよ」
そんなふうに、
自分の願いや憧れに寄り添う顔をして近づいてくる。
もしかしたら、普通の顔をして、
日常の中に紛れ込んでいたりするのかもしれない。
だから人は、
普段は警戒していたとしても、
気づかないうちに安心し、
心を許してしまうのだと思う。
幸い今回は、
途中で立ち止まることができた。
昨日の私は、
神社の囁きに、
ロマンティックが止まらなかったのである。
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